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「平原。お前は俺に“何を相談に来た”んだ?」

「あっ、そうや! 忘れとった。そやから真希ちゃんが妊娠したって言うてきたんや」

 俺が手を叩く勢いで言ったら、萱崎は益々深い溜息を吐いて、瀬上は思いっ切り吹き出した。

「な、なんやねん。お前ら……」

「普通相談に来た内容を忘れるかぁ〜?」

 瀬上が人を馬鹿にした様に言った科白に、

「仕方ないだろう。トリ頭なんだ」

 と冷静に萱崎が酷い言葉を被せる。

 こいつらほんまに根性悪やで。

「お前らに相談した俺がアホやったわっ!!」

 そう言うた俺に萱崎が凄く冷静に、

「なんだ……。自分がアホだという自覚はあるんだな」

 と言った。

 おまけに瀬上まで、

「良かったねぇ〜。とことんアホじゃなくてぇ〜」

 と茶化して来る。

 こいつらは……。こいつらはぁ〜……。

 言い返したくても俺がこいつらに口で勝てる訳がない。

「アホンダラ! お前の母ちゃん出ベソっ!!」

 悔し紛れにそれだけ言うと、生徒会室の戸を思いっ切り閉めて後にした。

 ほんま、俺のアホ……。

 なんであんな男に頼ろうとしたんやろ。

 萱崎忠士。

 出会いは至上最悪。




  **********


『そやから俺は女と違う言うてるやろっ! 目ぇ腐っとんのと違うかっ!! 自分ら』

『ゲェ、何。男ぉ〜!? マジかよ』

 何がゲェじゃ。こっちの方が男に軟派されて、よっぽどゲェじゃ。

 それは中1の事やった。

 まあ、今でも充分綺麗な顔をしとる俺やけど、中学入り立ての頃は身長も低かったからか、女の子にしか見えへんかった。


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