[26]


「お前は? 俺の事嫌いじゃないよな」

 って言われてもぉ〜……。確かに嫌いじゃないけど……。って、洗脳されてない? 俺。

「まあ、今更嫌いって言われても許さないけどな」

 ど、どうして?

「この俺が告白して“やってる”のに、振るなんてマネ許さねぇーぞ。朋!」

 そ、それって脅迫じゃ……。

「諦めて俺のものになれ」

 そう言われたと同時に飯島先輩の腕の中に閉じ込められた。

 俺の直ぐ近くには、飯島先輩の本当に綺麗な顔があって。俺はもう只管見蕩れてしまう。

 と、飯島先輩が苦笑した。

「目ぇ瞑ってくれないとキスできないんだけど」

 キ、キ、キ、キスゥ〜? 誰と!? って、勿論飯島先輩とだよね?

 うっわぁ〜、無理! 絶対無理! 恥かし過ぎるぅ〜。

 照れて暴れる俺の顎を押さえて上を向かせると、

「今更ジタバタすんじゃねぇ!」

 と脅された。

「キスさせろ」

「ううぅ〜〜〜っ……」

 先輩の綺麗な顔のアップに耐えられず目を瞑ったら、顔の上から先輩の噴出す様な声が聞こえてきた。

 な、なに?

「わ、わりぃ。な、なんか、お前ブルブル震えてんだもん。叱られたワンコみてぇで……」

 そのまま先輩はゲラゲラ笑い出す。

 余りにも余りにもな扱いに、ぶうっとむくれていると、

「可愛い顔すんなって」

 チョコンとキスされた。

 はい?

 いや、可愛くはないだろ。この俺だもん。

 でも先輩は本当に優しい目で俺を見ていて―――。

「先輩…………」

 自分が出したとは思えない何処か甘えた声。

 先輩の顔が近付いてきて、俺は自然と目を瞑った。


≪BACK  NEXT≫
≪目次
≪TOP