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 そんな俺の頭を突然両手でガシガシと飯島先輩が掻き乱す。

「な、なぁ〜に?」

 半泣きになりそうになりながら飯島先輩を見れば、実に楽しく笑った先輩が居た。

「お前はそういう処が可愛くて堪らない。どうせ鈍いお前の事だから気付いてなかっただろうけど、俺はお前の事が好きなんだぜ」

 ………………。

 えっと……。

 え?

 ええっ?

「うっそー!?」

 俺の怒鳴り声に飯島先輩が顔を顰める。

「何十秒掛かってんだよ。お前は」

 そう言って俺の耳を引っ張るこの先輩の何処に、俺に対する愛情を感じればいい訳?

 っていうか、飯島先輩って……。

「だって保君は? 保君の事が好きだったんじゃないの?」

「はあ? お前俺があんな可愛げのない奴を好きになると思ってんのか?」

 いや、保君は充分可愛いってば。

「……お前は覚えてねぇかもしれないけど、ここで初めて会った時、お前俺に笑い掛けてくれたんだ」

 覚えてるよ。初めて飯島先輩を見た時。あの時も雨が降っていて、雨の中高いバーを楽々と飛び越えていたんだ。

 俺にはその人の背に羽が生えてるのかと思ったよ。

「俺にはお前の太陽みたいな笑顔が眩しかったよ」

 え?

「お袋の葬式の間、俺が思い出していたのは、朋。お前の笑顔だったよ」

 え? え? ええーっ?

 な、なんか照れるつーか、なんていうの。俺はどんな顔をすればいいのぉ〜?


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