[25] そんな俺の頭を突然両手でガシガシと飯島先輩が掻き乱す。 「な、なぁ〜に?」 半泣きになりそうになりながら飯島先輩を見れば、実に楽しく笑った先輩が居た。 「お前はそういう処が可愛くて堪らない。どうせ鈍いお前の事だから気付いてなかっただろうけど、俺はお前の事が好きなんだぜ」 ………………。 えっと……。 え? ええっ? 「うっそー!?」 俺の怒鳴り声に飯島先輩が顔を顰める。 「何十秒掛かってんだよ。お前は」 そう言って俺の耳を引っ張るこの先輩の何処に、俺に対する愛情を感じればいい訳? っていうか、飯島先輩って……。 「だって保君は? 保君の事が好きだったんじゃないの?」 「はあ? お前俺があんな可愛げのない奴を好きになると思ってんのか?」 いや、保君は充分可愛いってば。 「……お前は覚えてねぇかもしれないけど、ここで初めて会った時、お前俺に笑い掛けてくれたんだ」 覚えてるよ。初めて飯島先輩を見た時。あの時も雨が降っていて、雨の中高いバーを楽々と飛び越えていたんだ。 俺にはその人の背に羽が生えてるのかと思ったよ。 「俺にはお前の太陽みたいな笑顔が眩しかったよ」 え? 「お袋の葬式の間、俺が思い出していたのは、朋。お前の笑顔だったよ」 え? え? ええーっ? な、なんか照れるつーか、なんていうの。俺はどんな顔をすればいいのぉ〜? ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |