[完] 「兄ちゃん……。ごはんはぁ〜?」 その笑顔に見蕩れてた俺を現実に引き戻す様に、目を覚ました聡が寝惚けながら訊いてくる。 つーか、男に見蕩れてどうするよ!? 俺。 「ごはんって……。親父がまだ帰ってないから何も用意出来てな―――ああっ!!」 行き成り上げた俺の大声に、仁科も聡も吃驚したのか目が真ん丸になった。 でも俺はそんな事には構ってられない。 大事な事を忘れていた。 「聡が見付かった事、親父に連絡入れるの忘れてたぁーーー!!」 「おい、おい……」 仁科が呆れた様に突っ込み、俺は慌てて携帯を手にする。 そんな俺の様子を見ながら仁科が聡に、 「仕方ない兄ちゃんだな。代わりに俺が夕飯作ってやるよ。こう見えても何でも作れるぞ。何が食べたい?」 と言ったので、思わず聡より先に大声を出してしまった。 「豚カツ!」 「お前に訊いてない」 即行、冷たく返された。 □□仁科惟弦□□ 俺の教室が息を呑む音さえ聞こえるほど静まり返ったのは、世良の家にいってから3日後の事だ。 「責任取って貰おうか?」 他クラスの世良が態々俺のクラスの俺の席までやってきて、偉そうに腕組みをしながらそう言った所為で、教室中が静まり返ってしまった。 「……責任を取らなきゃならない事をした覚えはないが?」 「すっ呆けんなよ!」 俺の言葉に世良が眉間に皺を寄せて怒鳴ったもんだから、クラスの連中は皆一斉に見て見ないふりでそっぽを向いた。 それを見た世良が俺の肩に腕を掛け、俺の身体を引き寄せると耳朶に直接小声で話し掛けてきた。 「あれ以来、聡が『にしな』『にしな』って煩せぇーんだよ。『にしなはいつ来るのぉ〜』って毎日言われてんだ。頼むよ。今日このまま家に来ねぇか? 晩飯作ってくれると聡の奴も喜ぶしよ。あ、なんなら泊まっていく? 明日学校休みだしよう」 「……それって……、お前が夕飯作りたくないだけじゃないのか?」 「あれ、ばれた?」 俺の顔の直ぐ近くにある男前な顔が、テヘヘヘって感じで悪戯っぽく笑ったのが可愛く見えたなんて、絶対に秘密だ。 -END- 2005/5/13 ≪BACK ≪目次 ≪TOP |