[完] ◇◇天王寺羽須美◇◇ なんだっけ? 本当は俺、拓人に何を言おうとしてたんだっけ? あの場に居たくなくて、ただ夢中で走ってきて、やっと自分の教室の前まできた時には、信じられない事に自分が何故走っていたのかも一瞬判らなかった。 そうだ。俺、拓人にふられたんだ。 何時かこんな日が来るって判っていた所為か、何だか全然悲しくない。 寧ろ当然の事だって納得している自分が居て不思議だ。 ただ、朝起きた時に何かを決心した筈なのに、それが何だったのか全く判らない。 教室に入り自分の席に着く。普通は倶楽部の朝練をしている時間なので教室には誰も居なかった。 まあ、朝練がない奴でこんなに早く来る奴も居ないしな。日直ですら遅刻してくるんだから。 やる事もないので鞄を開け、取り敢えず教科書を机の中に放り込もうとしたら、拓人の漫画の本が入っている事に気付いた。 そうだった。この本を返すつもりだったんだ。 そしてその時謝って、嫌だから殴った訳じゃないって言うつもりだったんだ。 ちゃんと好きだって。言うつもりだったんだ。 好きだよ。拓人の事が。 気が付いたら傍に居て、気が付いたら好きになっていて、在り来たりだけど拓人が初恋だったんだ。 拓人以外の人を好きになった事もない。だから嫌われるのが怖かったんだ。 女の子と比べられるのが怖かったんだ。 ふと気付いたら、手にした拓人の漫画の本が濡れていた。 それは俺の涙腺が壊れた所為だった。 男の癖して泣くなんて見っとも無い。と頭の片隅では思っているのに、ぶっ壊れた涙腺は後から後から涙を放出する。 何時か、拓人の隣に何でもない様に立てる日がくるのだろうか? 何時か、拓人と笑って下らない日常話をする時がくるのだろうか? くるかもしれない。 ただそれは果てしなく遠い。 だって、俺はまだ中三だから。そんな未来の自分は想像できない。 ただこの胸の痛みに涙するだけだった。 -END- ■この話、どうやら人気がない様で・・・^^;; というか里那は「喧嘩の強いはっきりした格好良い受け」しか書かないと、一部の方に(?)思われていた様で・・・。 「羽須美みたいなタイプはちょっと・・・」とか、「ガッカリです」とかメール貰っちゃった><;; 続き書こうか如何しようか悩んだけど、兎に角中学生篇だけでも終わらせておこうと思って書きました。中途半端ばかりが溜まっていくのは嫌だったので・・・。ENDマークだけは付けておこうと・・・。 では、読んで下さった方が居られましたらば、多大なる感謝を。 2005/9/29 水紀里那 ≪BACK ≪目次 ≪TOP |