[12] 「うっわぁー。なんか“ただいま”って気がする」 「そうだね……。1ヶ月以上も離れていたもんね」 俺の言葉に隣に居た保君がやんわり笑って答えてくれた。 ここの学校は今時珍しい『三学期制』だ。小・中・高と殆どが『二学期制』の中、9月1日に始業式がある。 やっぱ田舎の学校だからか? 何て事を考えながら寮の自分達の部屋に向う。 少し早目に帰って来たので、普通の寮ならまだ人気が少なく静まりかえってる筈だけど、流石いわく付きの寮だけあって殆どの奴が帰省してないのか、寮の中の賑やかさぶりは変わらない。 いわく付き。 つまりここに放り込まれてる殆どの奴らが“帰る処の無い子”だと言われてる。 この寮及び学校の通称は都合の悪い“餓鬼捨て山”親が要らない子供を預ける処。そう言われてるそうだ。 けど俺は余りピンと来ない。 自分の子供が要らない親なんて居るのかなぁ〜。 なんだかんだ言ったって、俺の両親は俺と保君が帰って来る事を凄く喜んでくれた。 それこそ帰った晩御飯のおかずは豪華だった。 あくる日には元に戻っていたけどね。 根掘り葉掘り訊く妹達とゲームの相手をせがむ弟達。 普段なら鬱陶しくて仕方ないものが、何故か嬉しくて仕方なかった。 まあ。これもあくる日には鬱陶しかったけど。 だからこの寮の状況は信じられない。なんで皆寮に残るんだ? 家に帰らないんだ。 大辺もここに残ってる筈だ。 まあ。あいつの残る理由は聞いたけどイマイチ理解不能だった。 同人誌がどうの。イベントがなんとか。って。 そこまで考えてふと思い出した。 そういえば“あいつ”もここに残ってるんだっけ。 「何処行くの? 朋」 ほぼ無意識に立ち上がり部屋から出ようとしたら保君から不思議そうに声を掛けられた。 「あっ……と、学校のグランド……」 「何しに?」 しどろもどろ答えた俺に保君が突っ込む。 そういえば俺、何しに行くんだろ? ただ行かなくちゃいけないって思って立ち上がったけど。なんで行かなきゃなんないんだ? うぅ〜〜〜ん。 考え込んで固まってしまった俺に保君が軽く溜息を吐いて言う。 「行っといでよ。意地悪言ってごめん」 意地悪? 何時保君が俺に意地悪を言ったの? 保君の言った事はよく判らなかったけど、保君が自分の荷物を片付け始めたので何となく訊けなくなってしまった。 仕方がないので俺は学校のグランドに向うべく、自分の部屋を後にした。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |