[13] そこには思ったとおり“あいつ”が居た。 体重を感じさせないくらい綺麗なフォームで空を舞っていた。 本当に背中に翼が生えてるんじゃないかと思ってしまう。 「なんだ。神凪朋弘。もう帰って来たのか? ママにはちゃんと甘えてきたか?」 ボォ〜ッと見蕩れてた俺に気付き飯島賢が声を掛けてくる。 どうでもいいけど、なんでこいつは口を開いた途端厭な奴になるんだ。 さっきまでは見蕩れる程綺麗だったのに。 「そんな歳じゃねぇーよっ!」 「そぉ〜かぁ〜?」 俺が噛み付いても平然として薄ら笑いを浮かべている。 本当に厭な奴! 「あ……じゃなくて、先輩こそ1回も帰らなかったの?」 「だって俺。“お前と違って”代表選手ですから」 今“お前と違って”を強調したなぁ〜。 やっぱりこいつは厭な奴だ。大っ嫌いだ。 そう思っていたのが顔に出たのか、飯島賢は俺の顔を見ながら、 「朋弘ぉ〜。そんな顔すると虐めるぞ」 と本気とも冗談ともつかない事を言ってきた。 つーか多分これは本気だぞ。 やっぱり、やっぱり、大嫌いだっ!! 二学期に入った途端校内は俄然活気付いた。 来月には文化祭があるからだ。 普通の高校なら恥かしさも手伝って、特に男女共学は女子が一生懸命文化祭の準備をしても男子はサボってばかりで、女子の総攻撃に遭う。 現に俺が中学の時がそうだった。 文化祭準備とか合唱コンクールの練習を一生懸命やるのって恥かしくない? 俺は凄く恥かしくてサボってばかりいたよ。 でも不思議なものでこうやって周りが頑張ってるとサボれないというか、ついつい熱心に参加してる。 まあ。それだけ此処が田舎で娯楽が少ない所為なんだろうけど。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |