[15] 文化祭当日。 俺の学校の生徒は盛り上がってる。 なんと言っても女子高生が居るのだ。目の前に。 と言っても多分都会の男子校と比べると圧倒的に少ない数だけど、これだけ閉鎖的な毎日を暮らしてる俺らにとっては新鮮で何処の子も可愛い。 例え彼女らの目的が俺らでなくて他にあっても。見てるだけでも気分が和んでくる。 「瀬尾さぁ〜ん。この間の試合見ました。これからも応援してますね」 「あ、ああ……」 「霧島くぅ〜ん。久し振りぃ〜。本当にこんなド田舎の高校に入学してるとは思わなかったよぉ〜」 「悪いか」 てか、同じクラスの奴じゃないから知らない奴だけど。女の子に対して愛想無さ過ぎ。あいつら。 そう思って見ていた俺の耳に聞き覚えのある声が飛び込んできた。 「屋久ぁ〜。何だよそれぇ〜。似合い過ぎだよ」 大辺の声だ。 「煩いよ」 見ると黄色いドレスを着て綺麗に化粧をしている男子を大辺と数人の男子が取り囲んでいた。 「夜は一人で暗い処に行ったらあかんで。自分」 一番小柄な子がそう言うと隣の男子が、 「本当に。これからは襲われない様に注意した方がいいかもね」 笑いながらそう言う。その顔は、保君を見慣れてる俺でも釘付けになるくらい魅力的な顔だった。 本当に完璧な美少年ってこういう事を言うんだって思うくらい完璧な美少年なんだ。 白い肌。艶々の黒髪はサラサラと音を立てそうで、瞳は黒目部分が多いのかな。決して大きいという事はないのに吸い込まれそうだ。 ボォーっと見蕩れていたのを察知されたのか、美少年がこちらを振り向いた。 が直ぐにフイっと顔を背けた。 やっぱ美少年だけあって厭な奴。 俺はつい自分の偏見でそう思ってしまった。 だって飯島賢も凄い美形だと思うけど、性格極悪だもん。 その点保君は優しくて面倒見が良くて本当に良い人なんだ。 廊下に突っ立ったままそんな事を考えていた俺に今度は大辺が気付いたみたいだ。 「神凪」 ニコニコ笑って走り寄って来る。 その顔は普段がキツイ印象がするだけに凄く可愛い。 って、何言ってんの。俺。 「何やってんの? お前。こんな処で」 「あっ、いや……」 なんにもしてませんでした。ボォーっとしてただけで。 「大辺。ドレス着た人と知り合い?」 「ああ。屋久? うん。友達なんだ。屋久のクラス抽選でクラス劇引いちまってさ。屋久、『美女と野獣』のベル役だって」 それは気の毒に。 おそらく文化祭の催し物で各クラスがやりたくないのが劇だろう。科白覚えなきゃいけないのが面倒臭いうえに、人前で演じるなんて恥かし過ぎる。 だから劇はクラスの文化祭委員に選ばれた奴が代表で籤を引く事になっている。 まあ。文化祭委員も大変だよな。万が一劇に当たっちゃったら絶対クラスの奴らに責められそうだ。 そう考えていた俺の背中を大辺がポンと叩き、 「俺交代の時間なんだ。行くわ。後で絶対俺らのクラスにも来てくれよな」 と廊下を激走していく。 大辺。廊下は走っちゃいけないんじゃなかったのか? つーか、忘れてた! 大辺のクラス……。 やっぱ、行かなきゃ駄目、かな……。 急に重くなった足を引き摺る様に俺も交代の為、自分のクラスに向った。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |