[21] 朝、起きたら雨だった。 雨の日は朝練がない。だから二度寝しても良かったのに、俺はフラフラと起き出し何故か学校の校庭に向う。 細かい霧みたいな雨だったので、傘も持たずグランドに向った俺はそこにボォーと突っ立っていた。 “あの時”も雨が降っていた。 雨の中、先輩が飛んでいた。 その姿が本当に綺麗で、俺は見惚れていたんだ。 もう、会えなくなっちゃうの? そんなの嫌だよ。 「毎日、毎日、よく降るね」 そう言ったのは大辺だった。 「修学旅行先は晴れているのかな」 これは保君。 「大丈夫だろ? 沖縄は確か晴れの予報だよ」 そう大辺が返しながら炒飯を口に運んだ。 「………………」 二人の会話をボォーと聞きながら、ただ義務的に御飯を口に運んでいた俺は、保君に見詰められてる事に気が付いた。 「な、な、何?」 「朋……。元気ないね」 「そ、そうかな……」 俺の言葉に返答したのは大辺だった。 「こいつ、文化祭以来タイムも落ち捲り。特にここ最近は全然似合わない落ち込み方してやんの」 似合わないってなんだよ。 俺だって落ち込む時だってあるんだよ。 何時も何時も、そう脳天気にはいられないんだから。 そう思っても口にしなかった俺に保君が溜息を吐きながら言った。 「……飯島先輩が居ないから落ち込んでるの?」 え? 「朋は……、飯島先輩に会いたい?」 え? 「そういえば飯島先輩帰って来なかったよね。修学旅行も結局行けなかったし。やっぱ噂通り、このまま学校を辞めちゃうのかな」 「そんなの嫌だっ!」 大辺の言葉に俺は無意識に食堂の椅子を蹴り倒し立ち上がっていた。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |