[22] 俺の行き成りの行動に大辺の目がまん丸になり、 「お、おう。だ、だよね……」 とうろたえながらも返事してくれた。 保君はそんな俺の顔をじっと見る。 その瞳は何故か凄く辛そうで、悲しそうだった。 如何してそんな目をするの? もしかして俺が保君を傷付けたの? 「あ、あの……。ごめん」 座り直して謝ると、 「何謝ってるの? 可笑しな朋」 と、何時もの綺麗な笑顔で笑われた。 俺も何だかつられる様に笑った。 結局飯島先輩は、2年生が修学旅行から帰って来ても寮には戻って来なかった。 毎日自分でもどう説明していいのか判らない不安が襲う。 だけどそれが何か判らない。 判らないまま日が流れた、ある日の朝。 「朋。朋ってば、起きて! 朋っ!」 保君に起こされて開かない目を擦ると、枕元にあった目覚ましはとっくに朝練の始まってる時間だった。 「うっわーーー! 遅刻ぅ〜」 大慌てで起きて支度をしてる途中に違和感を感じる。 窓の外から聞こえるこの独特の音。 家に居た時は気にした事もなかったけど、木造の寮だから余計に響くのか、この寮に入った当時は気になって仕方なかった。 窓に近寄りカーテンを開けると“音”が示した通り、雨が降っていた。 「保君。雨の日は朝練がないんだよ」 保君の方に振り返ってそう言えば、ちょっと寂しそうに笑った保君が、 「いいからグランドに行っておいでよ」 そう言って俺の身体を部屋から押し出した。 「ちょっ、ちょっと保君?」 押し出されながら振り向くと、保君は綺麗な―――、見てると切なくなる様な笑顔を浮かべて俺に言う。 「僕はね、朋が一番大好きだよ」 何を今更言うんだろ? そんなの俺だってそうだよ。 ずっと、ずっと、ずぅ〜〜〜と、保君が大好きだったよ。 そう返したら保君は少し困った顔をして、首を傾げた。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |