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 俺の行き成りの行動に大辺の目がまん丸になり、

「お、おう。だ、だよね……」

 とうろたえながらも返事してくれた。

 保君はそんな俺の顔をじっと見る。

 その瞳は何故か凄く辛そうで、悲しそうだった。

 如何してそんな目をするの? もしかして俺が保君を傷付けたの?

「あ、あの……。ごめん」

 座り直して謝ると、

「何謝ってるの? 可笑しな朋」

 と、何時もの綺麗な笑顔で笑われた。

 俺も何だかつられる様に笑った。






 結局飯島先輩は、2年生が修学旅行から帰って来ても寮には戻って来なかった。

 毎日自分でもどう説明していいのか判らない不安が襲う。

 だけどそれが何か判らない。

 判らないまま日が流れた、ある日の朝。

「朋。朋ってば、起きて! 朋っ!」

 保君に起こされて開かない目を擦ると、枕元にあった目覚ましはとっくに朝練の始まってる時間だった。

「うっわーーー! 遅刻ぅ〜」

 大慌てで起きて支度をしてる途中に違和感を感じる。

 窓の外から聞こえるこの独特の音。

 家に居た時は気にした事もなかったけど、木造の寮だから余計に響くのか、この寮に入った当時は気になって仕方なかった。

 窓に近寄りカーテンを開けると“音”が示した通り、雨が降っていた。

「保君。雨の日は朝練がないんだよ」

 保君の方に振り返ってそう言えば、ちょっと寂しそうに笑った保君が、

「いいからグランドに行っておいでよ」

 そう言って俺の身体を部屋から押し出した。

「ちょっ、ちょっと保君?」

 押し出されながら振り向くと、保君は綺麗な―――、見てると切なくなる様な笑顔を浮かべて俺に言う。

「僕はね、朋が一番大好きだよ」

 何を今更言うんだろ? そんなの俺だってそうだよ。

 ずっと、ずっと、ずぅ〜〜〜と、保君が大好きだったよ。

 そう返したら保君は少し困った顔をして、首を傾げた。


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