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「何だ。えらく素直なんだな」

 俺を見る飯島先輩の目が意地悪に輝いた。

「あれだけ避け捲っていた癖に」

「べ、別に避けていた訳じゃ……」

 モゴモゴと口篭る俺の頬っぺたを飯島先輩がムギュウって感じで摘んだ。

「いひゃいって……」

 どうしてこの人ってこんなに意地悪なんだろう。

 俺の頬っぺたを抓ってる飯島先輩の顔は本当に楽しそうで、小さい子が興味ある事に一心に惹かれてる時の顔に似てる。

「で? なんで俺を避けてた訳だ?」

 やっと俺の頬っぺたから手を放したかと思うと、尋問が始まる。

「だから避けていた訳じゃなくて……」

「とぉ〜も、はっきり言わないと反対の頬っぺたもムギュっとするよ」

 飯島先輩のその言葉に両頬を押さえてブルブルと首を振ると、

「だって、お化けが怖いなんて、莫迦にされると思っていたんだもん!」

 と必死に言った。

 俺の言葉に飯島先輩は不機嫌そうに唇をへの字に歪めた。

「お前―――。俺の事をそんな風に思っていたのか?」

 え?

「人間誰だって苦手はあるだろう。弱点のない奴なんて可愛げないね。俺はそんな奴見ていて楽しくないし、傍にも居て欲しくないね」

 と何処か偉そうに言った。

「ご、ごめんなさい……」

“楽しい”という言葉には引っ掛かったが、それでも俺は一方的に飯島先輩の事を誤解してた事を素直に誤った。

「ふん!」

 飯島先輩が不満そうに鼻を鳴らした。

 俺は飯島先輩のその態度に益々小さくなって俯いた。


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