[6] 「如何したの? 朋?」 そんな俺の様子に保君が心配そうに尋ねてくる。 「おいおい。それくらいで泣いちまったか?」 飯島賢は如何にも人を莫迦にした様に訊いてくる。 如何したって……。如何したんだろ。俺。 そんな固まってしまった俺の顎の下に形の良い長い指がそえられて、グイッと上を向かされた。 格好良いというよりは綺麗って表現の方が当て嵌まっていそうな顔が俺を覗き込んでいる。 俺は益々頬が熱くなっていくのを感じる。 「お前……」 飯島賢が何かを言い掛けた時、 「飯島ぁ〜」 彼を校内一遊び人こと、小城真琴(おぎ まこと)が呼んだ。 「次合同体育なんだよ。んでぇ、だったら3組と6組でクラス対抗のバスケの試合形式にしちまおうって事になったから、5時間目始まる前までにお前んとこのクラス。チーム別けしといてよ」 合同体育? ああ…。雨が降ってきたからか。 雨が降ってグランドが使えなくなると、その時間が体育にあたってるクラス合同で体育館使用という事になる。 雨。 一瞬、俺の頭をよぎった記憶は。 そんな俺を現実に戻す様に飯島賢はさっさと俺の顎の下から手を放して、何時もの誰にでも好かれるという、俺は嫌いだけど。笑顔で小城先輩に話し掛けた。 「ああ。判った。体育委員に伝えとくよ。それにしても珍しいな小城。お前が使われてるなんてさ」 「しょーがねぇーべ。オニガワラに掴まっちまったらよぉ」 ん〜〜〜。流石、小川原(おがわら)先生。 1年1組の担任で俺らの1年の体育の担当教員は、結構問題児が集まっていると言われてるこの学校の中でも恐れられてる人だ。 って、純粋に怖いんだけどな。うちの学校の空手部の顧問だけあって高校・大学と空手で全国大会に出た人だし。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |