[7] そんな事をボーッと考えていたら、 「じゃあな」 今度はやんわり飯島賢に頭を撫でられた。 その感触がなんとも言えずつい顔を見上げてしまう。 飯島賢は一瞬苦笑って顔をして俺の事を見詰めたかと思うと、今度は保君に笑顔全快で、 「じゃあねっ保良。今度は邪魔の入らない処で二人っきりでゆっくり話そうね」 と言った。 「んな事さす訳ねぇーだろっ!!」 俺が椅子から立ち上がって怒鳴ったら、何故か小城先輩が口笛を吹いた。 「勇気ある少年」 小城先輩の言葉に、 「只のお莫迦だ」 飯島賢が厭味に答える。 わ、悪かったなぁ〜。お莫迦でっ! 噛み付きそうな勢いで睨んでいたら、何がおかしいのかクスクス笑って手を振りながら小城先輩と一緒に食堂を出て行ってしまった。 ったくぅ〜。なんなんだよ。 飯島賢が居なくなった事で力の抜けた俺はどっと席に座り込んでしまった。 そんな俺に、 「朋。食べようか? すっかり冷めちゃったね」 子供の頃から俺を安心させてくれた優しい笑顔を向けてくれた。 「うん」 俺は素直に頷いて、すっかり冷め切ったB定食のトンカツを口に放り込んだ。 それにしても。 『保君にカッコイイ彼氏が出来たら写メ送ってね。朋兄』 長女の香乃架の科白に、んな事いくら保君が可愛くっても実際ある訳ない。って、思っていたのは俺だ。 だのに。 飯島賢だけでない。 先程の小城先輩の事を大辺やクラスの連中に聞いた時はマジ引いた。 いったい。全寮制の男子校って。 勿論此処が特別変なのかもしれないが。 『朋兄にも可愛い彼氏出来たら隠さず教えてね。あたし達は朋兄の味方なんだからぁ〜』 『っていうかぁ〜、カッコイイ彼氏でもいいよぉ〜』 双子の妹加野依と果埜実の科白を思い出し、俺は思いっ切り鼻に皺を寄せた。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |