[2] だったら何故柔道部の助っ人なんかしたかって? 土下座でもしそうな勢いで頼まれたら断れなかったんだよ。 俺もつくづくお人好しの様だ。また九條に笑われるな。 『仁科のお節介』 九條の綺麗な顔が呆れた様に言うのが簡単に想像が付いた。 「ちょっとトイレ行ってくる」 団体戦の大将が礼をしたのを見届けて、俺は皆から離れ様とした。 「おう」 柔道部の連中が笑顔で見送ってくれる。 このままもしかしたら俺がこの場から消えるなんて思いもしてない笑顔だ。 「はぁ〜……」 今柔道部が貸し切って練習試合をしている、この高校の体育館から離れた裏庭みたいな所に座り込み溜息を吐いていたら突然俺の身体に影がさした。 「仁科? 何やってんだ。こんな処で。試合は? 行かなくていいのか?」 見上げると、世良が座り込んだ俺を背を屈めて覗き込みながら矢継ぎ早に質問してくる。 「まだ時間まで暫くあるよ。つーか……。なんかもう、フケたい気分……」 「はあ?」 俺がヤケクソの様に自分の腕の中に顔を埋めてそう言えば、世良が呆れた様な声を出す。 「真面目男、仁科惟弦とは思えない言葉だな」 「俺の何処が真面目だよ。大体真面目な奴が喧嘩売って歩くか」 売って歩いたのは九條で、俺は売られるの専門だったけど。 「そうじゃなくて、責任感の強いお前がって、事。一旦引き受けたら何時も最後まで責任持ってたじゃん」 そうだけど。そうなんだけど。 「俺ん中には弱い俺も居んだよ! 今、逃げ出したくてしょうがないんだよ!!」 「……………………」 感情のままに弱音を吐いてしまい、何だか急に恥かしくなる。 俺、世良の前だけは何時もカッコイイ男でありたかったのに。 恥かしくて顔が上げられない。 ≪BACK NEXT≫ ≪目次 ≪TOP |